ヴェネツィア・スクラップブック

「悪人」

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日本にいる間だからこそできること。
ということで、今回の日本滞在中、時間がある時にはできるだけDVDで邦画を観ていた。
観たい映画は沢山あって、結局、全然日にちは足りなかった(他にも遊び過ぎたということもあるのだが・・・)。

その中で出会った映画のひとつ、「悪人」は、私にとって大切な映画のひとつになった。
日本を出発する前に、もう一度観た。またしても良かったので、原作も読んだ。
いい映画、というよりも、自分にとって大切な映画というのは何だろうと改めて考えてみると、きっとそれは、映画を観終わって、月日が経って、映画の全シーンや細部までは思い出せなくなっても、その時にその映画を観て自分なりに考えたことがその後の自分の人生の別の局面で、自分の中の何処かにしっかりと根付いているだろう、という予感のする映画、ではないかと思う。

どういう人が「悪人」か。人を殺した人は「悪人」か。殺していなければ「悪人」ではないのか。殺された人には「悪人」の部分はないのか。自分は「悪人」ではないと言えるのか。「悪人」の家族に罪はあるか。それ以外の人はその人達を非難できるのか。「悪人」となるしかない悲しいまでの優しさは存在するのか・・・。
哀しい映画ではあるのだが、小説が映像となることで、また別の方法で、小説の世界を観る人の心に広げたような作品だった。

私は前宣伝も前評判も何も知らずにこの映画を観たのだが、作品の終わりのテロップを眺めていたら、原作者の吉田修一さんが、共同脚本として参加していた。脚本にまで参加する原作者も珍しいだろう。
文で全てを表現する小説と映像で伝える映画はそもそも媒体として違う訳だから、本の世界を観る人に映像で伝えるためには原作と全く同じシーンとセリフではうまくいかないわけで、そこの部分に敢えて原作者が関わって作品の世界を映像で伝えるチームの一員としてタッグを組むというのはおもしろい、と思った。吉田さん自身が柔軟な人なのかもしれない。

音楽が、久石譲さんだった。原作の小説を読みながら唸った、どうすれば文の世界からあのような音たちが生み出されるのか・・・。

「悪人」
監督:李 相日
原作:吉田 修一「悪人」(朝日文庫刊)
脚本:吉田 修一・李 相日
主演:妻夫木 聡・深津 絵里・樹木 希林・柄本 明 他
音楽:久石 譲
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by sumiciki | 2012-01-28 23:21 | 映画・舞台など

ヴェネツィア在住。雑記帳ブログ。
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