市場で買う、花

ヴェネツィアのリアルトの市場に、時々(毎日ではないが)、花売りが出る。
いわゆるアレンジメントのような花束は全然売っていなくて(鉢植えも売っていない。もちろんギフトラッピングというのは無し)、一種類づつの切り花の花束を、がさがさっとバケツに入れて売っている。
観光ガイドにも載っている、リアルトの市場。
土曜日の午前中などは特に、地元の人と観光客とで賑わっている市場だ。
花は観光客は殆ど買っていかないから(フルーツを買う人が多いのでは)、この花売りの所には、地元の人達がやって来て、家庭用・レストラン用・ホテル用などに買っていく。
私もここで、時々花を買うのが習慣になった。
この市場の花売りで買う花は、とにかくよく持つ。日持ちが良いのだ。
私は切り花を日持ちさせる液体(保存液というのだろうか。日本語が浮かばない・・・)を持っていないのだけれど、それでも2週間位は持つ。3週間近く持った花もあった。
お値段は大体3~5ユーロ位。時々大振りの高価(?)な花が、7ユーロ位。
今回は、母の命日の前だったので、ホワイトの花を選んだ。花の名は、フィラデルフィア、というのだそう。
5ユーロを渡して、がさーっとした大きな束を受け取り、肩に担ぐような感じで、家まで歩く。花束を担ぎながら天気の良い街を歩くのは、なんとも気持ちがいいもの。
帰宅して、
花瓶に活けたら、
全然ひとつの花瓶では足りなかった。

中振りの花瓶2つと、
小さな花瓶2つ。
私の暮らす、狭いワンルームアパートは、突然花で満たされた。が、しかし一種類だけなので、当然ながら全部同じ花で(苦笑)。
これで5ユーロ。なんとお得な。
花の美しさもさりながら、ビンボー性の私なのでした。

帰国する度におのぼりさんになっていく私・・・「映画館編」

イタリアから日本に出発する前に考えていた、
今回の瞬間帰国(日本滞在丸三日間)で、やっておきたかったこと。(以下優先度順)
1 結婚式出席(やっておきたかった、というよりこれがメインイベント)
2 お墓参りなど、家の諸用事
3 NODA MAP公演「BEE」観劇
4 映画「テルマエ・ロマエ」を観る
結婚式前日は何か用意が必要な事があるかもしれないし、などと考えて、今回は友人知人の皆さんと会う予定を、涙を呑んで割愛(というか、物理的にも難しかったのだけど)。
まず1と2はよしとして、
・・・で、もし諸用事の前後に時間ができたら、是非行ってしまいたい!と熱望していたのが、3と4の舞台と映画。
野田秀樹さんの舞台は日本に住んでいた頃から大好きだったのだが、
なにしろイタリア在住では、「ちょっくら公演を観に日本へ」、とはいかないのが哀しいところ。
しかも私が日本に帰国している期間に公演があることの方が珍しいので、イタリアに住み始めてからは、とんとご御無沙汰してしまっていた、野田さんの舞台。
あの「BEE」が、私の帰国期間中に再演されているとは!!
と感激したのも束の間、前売り券は当然売り切れ、当日券(前日に電話予約)を試すも、予約受付の開始時刻から30分電話をかけっ放しでも繋がらず、繋がった時には「当日券は予定枚数を終了」という、なんとも無慈悲なオネエサンのアナウンスが。
ただでさえ少ない貴重な72時間(←時間刻み)のうち、電話かけっ放しの上成果ナシという、あまりに哀しい時間の無駄遣い。無念。
という訳で3がダメだったので、是非とも4の映画は観なければ、と気合いを入れていた。
映画「テルマエ・ロマエ」を、自宅の最寄りの映画館、新宿ピカデリーで観ることに決め、途中通りがかりにあるチケットショップで前売り券を買う。
上映時間にはまだ1時間半ほどあったので、ランチしたり近くの店を覗いたりして時間を潰す。
さて開場時間が近づき、映画館入口の人混み(すごい人混みだった!なにしろロードショー翌日&祝日の午後だったので)の中で私もスタンバイして、いざ開場・・・・・・。
と、この時になって気が付いたのだが、私が持っているチケットと、周りの人達が手にしているチケットがどうも違う。あれ・・・と不安がよぎった時、チケットのもぎりが私の番に廻ってきた。
もぎり係のオネエサンが、申し訳なさそうに(でも「お客さん、わかってないねー」と目が言っている気がしたのは、私のヒガミだろうか)、「このチケットでは、申し訳ありませんが、満席の場合はお入りいただけません」と言ってきたのだった。
この時の私のショック、ご想像いただけるだろうか。
私の周りの沢山の入場者は、ずんずん入場していく。私の知らないチケットを持って・・・。そこで私一人がダメ出しされて、少し大袈裟に言うと、まるで東京という街から拒否された地方から出て来たばかりの人の心境だった(まあその通りなのだが)。
もしここがイタリアだったら(つまり個人交渉次第ということ)、チケットのもぎり係のオネエサンに、「イタリアから、この映画を楽しみにやって来たんです!日本には3日間しかいないんです!どうしても、このスバラシイ評判の映画を観たいのです!立ち観でも全然OK!!」と攻めに掛かるのだけれど(イタリアでは、試しにまずやってみるとやり方次第で成功することが度々ある)、この東京の映画館のスタッフには通用しないだろう・・・と士気も失せて、その次もまたその次の上映も満席と言われ、しょぼしょぼと帰途に着いたのだった・・・。
イマドキの映画館(というか、大分前から映画館ってこういうシステムだったんだろうか)では、チケット売り場で席の指定をする、らしい。
私の記憶では、映画館の指定席って有料だったのでは。それが全席指定??皆さんリッチだわー、とますます利用の仕方が分からない。
結局、ここの映画館では座席の指定が無料でできたのだった。私は、1時間半の時間潰しの前に、ここで席の指定をしておくべきだったのだ。今更気付いても遅い。ああ。
それにしても、貴重な72時間のうち1時間半(移動も含めると2時間半)を棒に振り、「くう~っ」という感じだ。
それでも執念でリベンジ。日本滞在最終日の朝イチで。
2度目にして、やっと映画が観られた。
それにしても、都心の映画館のスゴイこと。スピードと、マス(集団)の動かし方と、時間の刻み方と。
私の時代(って何歳なんだ)の映画館って、もっとまったりした場所じゃなかったか。
上映本数の多さ。チケット売り場の行列。チケット売り場の販売員は10人もいた(思わず数えた)。大量のチケットを、じゃんじゃん売っていき、すごいスピードでさばいていく。
うーん、もう、とても私では着いていけなくなっている・・・。衝撃的だったので、思わずチケット売り場の写真を撮ってしまった。
映画を観るのも一苦労の、おのぼりさんの東京、なのでした。

映画「テルマエ・ロマエ」を日本で

先日のブログで、映画「テルマエ・ロマエ」(2012年4月28日ロードショー)の公開前に、「日本にお住まいの方が羨ましい・・・」と書きましたが、
実は、ドラえもんに「どこでもドア」を出してもらって、
・・・というのはウソで(当たり前か)、
僅か三日間の日本滞在期間の間に、執念で観て来たのでした。
公開直後ということもあってか、会場は大盛況。
なんといっても、想像以上に、主役(古代ローマ帝国のテルマエ:公衆浴場技師ルシウス役)の阿部寛さんが適役。拍手!
古代ローマの街をイタリア人エキストラと一緒に歩いていても、ローマ人に見えてしまうあの顔の濃さ。だけではなくその熱演ぶり。
逆に、日本人と一緒に銭湯や浴室にいても、彼は本来日本人の筈なのに、「古代ローマ人とその他の日本人」にしか見えないところがスゴイ。
そしてあの美しいヌード(古代ローマ人ですから)。その日本人離れした美しい身体を堂々と、あけっぴろげなまでに。映画の画面に向かって「阿部さん、ありがとう」とお礼を言いたくなったのは、私だけではないだろう。
特に笑えるのは、前半部分。
オリジナルの漫画にあるエピソードが次々と、映画という実写になっても漫画的な感じそのままに展開。客席からは笑いが絶えない。漫画で笑った箇所で、ストーリーを知ってはいても、映画でまた笑ってしまう、そんな感じだ。
阿部さんはまさにルシウスなのだけれど、浴場にいる日本人役者さん達があまりにも「平たい」感じで、そのギャップが見事。
脇を支える市村正親さんなどはもう、日本人ではなかった・・・古代ローマの皇帝役が、日本人キャストとしてこんなに適役の人はなかなかいないだろう。日本人が、ローマ皇帝を、そのまま日本語で演じてしまう、この面白さ。
あくまでも個人的な感想としては、前半部分の「オリジナルの漫画に忠実なエピソード」で、もっと笑っていたかった~、というところ。
後半は映画オリジナルのストーリー展開となり、「現代日本と古代ローマを往き来するルシウス」という展開でなくなっていく(ネタバレになるのでストーリーは書きませんが)。数話完結型の漫画を映画に仕立て直すには、ストーリー展開が必要、ということかなあ、と思いながら観ていた。
いずれにしても、阿部さんルシウスここにあり、という入浴スペクタクル。
特に前半、笑えます。
劇場入口で、「特別編」もらえました。
ヤマザキマリの映画用特別編も、載ってます。

成田空港のマイ・ブーム

突然ですが、先日日本に「とんぼ帰り(返り?)」帰国をして来ました。
結婚式に出席する為の帰国だったため、日本滞在は丸3日と非常に短かったので(あ~っ!という間に過ぎました)、どなたにもお会いできない為ご連絡もせずに失礼致しました!
今このブログを読んでいただいている日本の友人&知人の皆さまには、この場をお借りしてお詫びします(しかも簡単ですみません:苦笑)。
次回、休暇で帰国する時に、ゆっくりお目に掛かりたいと思っています。
さて、話題は変わりますが、私が成田空港で毎回通う店があります。
「銀座 博品館」の成田空港店が、出発ロビー近くのプロムナードというのか、お土産屋さんやレストランなどが並んでいる辺りにあります。
ここに・・・・・すごい「マシン」がある!!! ↓

ズバリ、「プリクラ」(←もう死語でしょうか)ならぬ、「プリCUBE」。
顔写真(データでも可)を持参してマシンでスキャンすると、お好みのフィギュアにその顔を貼り付けてもらって「世界でひとつだけの」フィギュアが完成。
私などは毎回、成田空港から出発する度にこのマシンの前に足を運んでいるのだが、こんなに楽しいマシンがなぜひっそりと佇んでいるのか(なぜ行列ができていないのか)全く分からない。日本では「プリクラ」系マシンはもう古くて見向きされないんだろうか?
思わず、応対してくれた店員さんに「こんなにオモシロイ機械(←機械という表現がいいのかどうか)なのだから、もっと宣伝すればいいのでは?」と我ながら余計なことを言ったら(←でも褒めている)、
その店員さんがちょっと嬉しそうに、「銀座の店舗の方に、以前来日されたブラッド・ピットさんが足を運んでくださり、これが気に入られた様で、連日スタッフを連れてみえた」のだと教えてくださった。
おお、やはりブラッド・ピットはこのマシンの面白さが分かる男だったのだ、さすがブラピだ、と妙なシンパシーを感じつつ、今回もここでフィギュアをひとつ作成。
ブラピの例を出さずとも、コレ、以前イタリア人へのお土産に作って持っていったら、現在人気沸騰中、なのである。・・・・・・私の周りだけだが。
以前、イタリア人の友人の顔写真で「忍者フィギュア」を作ってお土産に持って行った
→彼が嬉しくてキーホルダーに付けて持ち歩いた
→それを見た(見せびらかされた)友人達から「ボクも~!」とリクエストが入り続けているのである。
フィギュアにも色々あって、私が選ぶのは「忍者」とか「新撰組」が多いが、他にも「キティちゃん」とか「ゴジラ」とかアニマル系とか、「(着物姿の)お姫様」など、種類も豊富である。
今回の出来上がりは・・・こちら!!「忍者(黒)」。

お土産ばかりでもつまらないので、前回は私も自分用に作ってみた。
ゴレンジャー系?の「モモレンジャー(もどき)」。
上方1枚目の写真が、「閉」状態モモレンジャー(もどき)。
「開」状態は、こちら ↓ 。
ちょっと顔写真がイマイチで、ズラのようになってしまっているが・・・。

(ちなみに、写真はデータでも可ですが、プリントアウトした写真の方がより美しく仕上がるとのことです。)
どうでしょう、みなさんも作りたくなってきたでしょう?(←ちょっと疑問)
今度成田空港へ行く方、是非トライアルしてみてください。
イタリアで話題になると思いますよ(多分・・・)。

銀座博品館 成田空港店
〒282-0011
成田市三里塚 成田国際空港内第1ターミナルビル
中央棟4階
○ TEL:0476-32-6458
○ 営業時間:7:30~20:30
○ 定休日:年中無休
「クリムト~ホフマンとゼセッション(分離派)の足跡の中で」

ヴェネツィアはサンマルコ広場に面するコッレール美術館にて、
「クリムト~ホフマンとゼセッション(分離派)の足跡の中で」という展覧会を開催している。
今年はグスタフ・クリムト生誕150周年ということもあり、本場ウィーンでも大規模な回顧展が開催されているらしいが、ヴェネツィアのこの展覧会も見応え有り。
クリムトの作品では、例えば「ユーディト(Giudetta)」(ウィーン、Belvedere)と「サロメ(GiudettaⅡ)」(ヴェネツィア、カ・ペーザロ)が同じ展示室に展示されていたり、ウィーンはゼセッション(分離派)会館にある「ベートーヴェン・フリーズ」の複製やその下絵等、多くの彼の作品が一堂に集まっていた。
そしてクリムトのみならず、展覧会のタイトルにも出ている、クリムトと共にゼセッションの創設者の一人でもある同時代の建築家、ヨーゼフ・ホフマンのデザインも多く見ることが出来る。
宝飾、椅子とテーブル、設計図面、デザインの下絵、等など。
この二人だけではなく、早世したクリムトの弟、アーネスト・クリムトの作品やスケッチメモ、クノップフの作品なども展示されていた。
あくまでも個人的に、この展示の目玉として私の中に焼き付けられたのは、クリムトの「向日葵」。
期せずこの作品が目に入った時の、向日葵がまるで悲しげながらも美しい女性の肖像画のようにも見えた時の、「あっ」という、瞬間。
今まで写真では何度か見ていた作品が、ナマの力でこちらに直接迫ってきた瞬間。
こういう瞬間が持てた展覧会は、嬉しい。
2012年3月24日~7月8日
ヴェネツィア:コッレール美術館
Museo Correr
「KLIMT nel segno di Hoffmann e della secessione」
展覧会のサイトはこちら ↓
http://www.mostraklimt.it/
(写真は全て公式サイトより拝借)

テルマエいよいよ

そういえば、そろそろあの「テルマエ・ロマエ」映画公開では・・・・・・
と思ってサイトを覗いてみたら、近く28日ロードショー。
サイトにいくつか予告編があり、短いながらもかなりオモロイ(↓コチラ)。
http://thermae-romae.jp/index.html
日本在住の方々は、私がサイトの紹介をするまでもなく日々テレビ等で予告をご覧になっているだろうから何を今更、と思われるかもしれないが、
もしイタリア等日本以外に在住の方、ご興味あればどうぞ。笑えます。
キャストを見てみると、日本人俳優陣が見事にその顔の濃さ薄さで「ローマ組」「日本組」と分かれている。
主演の阿部チャン、特に市村正親さんなどもう、日本人に見えない(笑)。
この、敢えてイタリア人キャストを使わず、「極力濃い顔の日本人をしてローマ人役をさせてしまう」オモシロさ。ここに映画だからこそ、のツボがある。
日本にお住まいで観に行かれる方、是非楽しんでいらしてください。羨ましい・・・。
春の、気まぐれ

ここ数日のヴェネツィアは、とにかく気まぐれで、ヘンなお天気が続く・・・。
ニュースによると、北イタリアの山の方では雪まで降ったらしい。既に4月も後半なのだが。
昨日もそうだったけれど、今日もまた、
昼にはサンマルコ広場では水が上がり水に浸り、
雨と風。それも強い風で、サンマルコ近くのフォンダメンタ(河岸沿いの路)など、冗談ではなく吹き飛ばされるかと思った。小柄な人は、ひょっとしたら本当に飛ばされてしまったのではないか、という程の強い風。重い体でよかった・・・。
折り畳み傘など全然役に立たず、風と雨の中、外で仕事。当然濡れしょぼる。
そうしたら、その10分後には雲は流れ去って、太陽に青空。
10分前には暴風雨に吹き飛ばされそうになっていたのに、そして傘が風で逆立ってしまっていたのに、その10分後にはもうまぶしい太陽の下でサングラスを取り出している。
なんとも変テコな天気。まるで空に馬鹿にされている感じだ。
ヴェネツィアの天気は、「天気予報で予報しにくい天気」だと言われる。
なにしろ水辺の街だから、水上の水蒸気が上方の雲を流し動かし、一日のうちに、そして同じ時刻でも地区によって、ころころと天気が変わるらしい。
そんな訳で、一日のうちに傘とサングラスとカーディガン(風が吹くと肌寒くなる)をとっかえひっかえ、という、今日の様な日が、時々あるのだ。
雨と風と浸った水が去った後で、雨後のタケノコの如く、にょきにょきと、もとい、ワサワサと、それまで屋内や屋根の下に集まっていた人々が広場に出て来た夕方。
雨をやり過ごしていたゴンドラ漕ぎも、運河上に漕ぎ出して行くのだけれど、まだ波が出ていて、雨後の濁った色の運河の上でゴンドラはぐらんぐらん揺れながら進んでいた。
街のあちこちには、お気の毒な傘の残骸がいくつも落ちていた。
ヴェネツィアにご滞在の方は、この気まぐれな、季節の変わり目のお天気にどうぞご注意を。

最近のテレビのマイ・ブーム、「Rai5」

(↑ヴェネツィアのシンボル有翼の獅子、の、おしり姿。)
最近のテレビのマイ・ブームが、「Rai5」。
イタリアの国営放送のひとつ(しかしNHKと違い、CMは有り)だ。
日本にいた時よりもこちらイタリアに来てからの方が、長い時間テレビを観ているかもしれない。
観ているというよりは、ヒアリング練習にもなるので夜間は結構付けっ放しにして、ながら族感覚で見ているのだが、もともと日本でも深夜番組をよく観ていた習慣は変わらず、こちらでもよく深夜番組を観ている。
イタリアもデジタル放送になって、視聴チャンネル数も増え、国営放送Raiのチャンネルも増えた。
この「Rai5」の深夜番組、イタリアの他イギリスやフランス、アメリカ等のドキュメンタリーやルポルタージュ番組をイタリア語に吹き替えて放映しているのだが、海外の番組をいろいろ観られるのが楽しい。
もともと映画も山ほど(誇張ではなく、本当に「山ほど」)放映しているイタリアのテレビだが、深夜枠のRai5で放映される映画は、個人的にぐぐっと引き込まれて最後までついつい観てしまう映画が多い。
先日も大好きなケネス・ブラナーが主演している「La Teoria del Volo(「The Theory of Flight」、邦題「ヴァージン・フライト」)を、翌日の夜はエディット・ピアフの生涯を映画化した「La Vie En Rose」をやっていて、つい最後まで観てしまい、感動しながらそのまま床に就いた。
例えば、フランスの旅行ドキュメンタリーでは、「Con I tuoi occhi(あなたの眼で)」という番組があるのだけれど、この旅行レポーターが盲目の女性である。しかも美人。ダルメシアンを盲導犬に、「彼女」の旅行をレポートする。
それは「目の見えない人」の旅行ではあっても、「障害者」の旅行ではない。
彼女の旅行に、障害者であるタブーはない。
(別に無理をしている訳ではなく)馬に乗り、アンダルシアでは聖週間のパレードを一緒に歩き、フラメンコのレッスンを受け、アルハンブラ宮殿を見学する。
彼女の旅は、触ること、香りを嗅ぐこと、音に耳を澄ますことに満ちている。
そして様々なものの手触りや、香りや、音、それらを画面から観ているこちらに伝えてくれるのだ。
観ているうちに、私はアルハンブラも訪ねた事があるけれど、彼女のようにちゃんとここを見て来たかしら、と思ってしまう。私は彼女ほど、石の手触りを、果樹の香りを、水の音を聴いていただろうか?断然ノー、だった。
そしてもうひとつ。彼女に接する旅先での人々がなんとも自然なのだ。
もちろん盲目の旅行者を案内するのだから、手を引いて一緒に歩いたりという事はするのだけれど、一旅行者として自然に接する。
美人な女性なものだから、スペインでは会った途端案内役のおじさんに「キミ、美人だねえ」とくどかれているのには笑ってしまった。
短いながらも素敵な番組。
その他にも、イギリスのBBC系のドキュメンタリーでアジアのバングラデシュの貧困やミャンマーの軍事政権下の村落をリポートしたもの、フランスのドキュメンタリーで各地を美しい空撮で撮影しながら世界の食と地球環境をテーマにしている「La Terra Vista dal Cielo(空から見た地球)」、アメリカの「Late Show」などなど、面白い番組を色々やっていて、ついつい夜更かし。
外国(イタリア以外)の興味深い番組を色々観られるのは面白いのだけど、逆に言えば、それだけイタリアでは自国制作の番組が少ない、ということ、かも?
うーん、ここまで書いてみて改めて思うが、ながら族でつい観てしまうテレビ番組は(時間的に)すごい無駄遣い&寄り道で、結果、私の生活は寄り道だらけである。
しかし、寄り道で思いがけず見つけるものは、とても楽しいのだった。
そして今日も夜更かしは続く・・・・・・。
ある晴れた日の、風景

(↑ヴェネツィアの街角にて。まだ藤の花が綺麗です。)
久々に、一日天気が良かった日。
太陽も出て暖かくなった、週末のヴェネツィア。
こんな日の朝、仕事でも船に乗るのはなかなか気分がいい。
島の北側、フォンダメンタ・ノーヴェ側のラグーナを、気候の良い週末の朝に通ると見えて来る光景。
船の修理場で自分達の舟を直してもらっている人達。
ラグーナで手漕ぎで舟を漕ぐ人達(ちなみに手漕ぎの場合、立ち漕ぎがヴェネツィア流の漕ぎ方)。
モーター付きの舟をかっとばす若い子(舟がバイク代わりである)。
水際の路を、犬と一緒に歩いている人。
そして、近くのオスペダーレ(病院)から出発した、棺を乗せた舟・・・。
この、霊柩車ならぬ「霊柩船」も、ヴェネツィアの風景に溶け込んで、ゆっくり進んでいた。
棺の上には美しい花が飾られ(白だけでなく、オレンジ色等の鮮やかな色の花を美しく飾っていた)、家族も乗せて、私達の前を船は進む。
「あの船、教会に行った後で、サンミケーレ島(フォンダメンタ・ノーヴェの向かいにある、お墓の島)に行くんだ」と私の乗る船の運転手さんが教えてくれた。
生きている人の日常の週末も、その傍らの死も、共に穏やかに水に寄り添っている、
そんなヴェネツィアらしい週末の朝の一風景が、島の北側のラグーナにはあったのでした。
「暖炉」の効用

先日、イタリアはマルケ州にいる友人の実家に電話を入れた。
4月に入ってからも雨が続いていて寒い日もあり、友人のお母さん曰く、4月なのに暖炉に火を入れたのだそう。
山の方は、まだかなり寒いらしい。
3月にここを訪ねた時にも、この家ではまだまだ暖炉が目一杯、働いていた。
東京生まれ東京育ちの私にとって、暖炉というものは縁遠いものだったし、今の日本でも「暖炉のある家」は珍しい方だと思うけれど、こちらイタリアには最近建てられた家でも結構この「暖炉」がお目見えする。
山の方の寒い地域の家、しかもイタリアの家は天井が高く広い。部屋数も多いし、それぞれの部屋が広い。また、機密性の高いアルミサッシでない家もある。
そんな所では、エアコンのような、つまり室内の空気全体を暖めるような暖房器具よりも、局所的に「暖炉の周りだけ」暖める、という方法が、実に有効であることに気付く。
暖炉のある部屋しか暖まらない、もっと正確に言うと広い部屋でも暖炉の周りのスペースしか暖かくないから、自然と家族はそこに集う。家に顔を出しに来る親戚や近所の人達も、かつて知ったる、という感じですぐにその周りに腰を下ろしていく。
そこで、火を囲みつつ、そして火を絶やさないように時々暖炉をいじりつつ、おしゃべりが、会話が続いていく。
暖炉は、自然に人がそこに集まってくる、という装置、「自動人寄せ装置」(我ながら下手なネーミングだが)みたいになっているのだった。
私は経験がないけれど、日本の家にかつて備わっていた囲炉裏、それもこんな感じだったのだろうか、と思う。
囲炉裏の周りで火を囲みながら、家族や近所の人達と、暖を取りながら話に興じていたのだろうか。
それ以外にも暖炉は、「ゴミ焼却炉」としても大活躍だ。
見ていると皆、例えばキャンディーの包み紙とか果物の皮や種などを、ポーンポンと暖炉の火の中に放り込んでいく。ちょっとした生ゴミや紙ゴミ(リサイクルするほどでないもの)は、各家庭で処分できてしまう、というわけ。
他にも生ゴミや食べ残し等は、畑の肥料や家畜の飼料となるから、そんなわけでこの辺の家から出るゴミ(特に生ゴミや燃えるゴミ)は、えらく少ないのだ。
一度暖炉に火を入れると、火が消えないように常に気を配る。
私の他に誰もいなくなる時には、「sumicikiさん、暖炉の火、よろしくね」と頼まれる。
そんな時は、暖炉脇で読書などしながらも、時々新しい薪を火にくべたり、うまく火が移るように薪の位置を移動したり、灰を横に掻き集めたり、「火を絶やさないこと」を意識する。
維持とメンテナンスには、それなりの労力が必要、だろう。
薪は常に調達しておかなければならない。
ここの家では、薪を買って届けてもらうやり方。
その薪を割るのは、お父さんの役目。
そして暖炉の「煙突掃除」、これもお父さんの役目だ。
以前に一度だけ、お父さんが暖炉の煙突掃除をしているのに遭遇したことがある。
そこにいたのは、普段の貫録あるお父さんというよりはむしろ・・・・・・チムチムチェリーだった。
小さい頃によく聴いていたあの歌、「チムチムニー・・・チムチムチェリー、私は煙突掃除屋さ~ん」の彼である。(今でもこの歌、流れているのだろうか?私の記憶では、『おかあさんといっしょ』だったか『みんなのうた』でよく聴いていたのだが。)
その歌の中に、「足の先か~ら頭~まで~、煤をかぶってまっ黒~け~」というフレーズがあったのだが、初めてナマで見た。本当に足の先から頭まで、煤をかぶってまっ黒けの人(改めて読み直すと、歌詞そのまんまである)。
このメンテナンス・フリーが謳われるご時世に、暖炉のメンテナンスってなんとまあ大変なのだ、と、このまっ黒けな人を前につくづく感じ、また小さい頃に聴いた「チムチムチェリー」がこの時初めて映像としてリアルにイメージされたのだった。
面倒なことは諸々あるだろう。
しかし、手入れが楽なものばかりを追っていると、きっと上に書いたような暖炉の効用は失われていくだろう。
「火」というものの存在と、「暖炉」というひとつの暖房器具の効用に、しきりと感心したのでした。

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